ⓔコラム7-3-10 K. oxytoca関連抗菌薬関連出血性腸炎
抗菌薬関連出血性腸炎とは,典型的にはペニシリンなどの抗菌薬を用いた治療後にみられ,急な腹痛,下痢,下血を伴う疾患である.その発症メカニズムには諸説あるが,抗菌薬関連出血性腸炎患者から低分子の細胞毒を産生するK. oxytocaが同定され,さらに抗菌薬関連出血性腸炎患者から分離されたK. oxytoca株を用いた動物実験においてKochの4原則を満たしたことを証明したことから,抗菌薬関連出血性腸炎の少なくとも一部はK. oxytocaが関連していると考えられる.抗菌薬関連出血性腸炎で,かつClostridioides difficileが検出されない場合に本症を考える.典型的な内視鏡所見としては,右側結腸が病変の中心の区域性の出血性大腸炎であり,粘膜出血と粘膜浮腫を認め,びらんや縦走潰瘍を伴うことがあり,浮腫性の壁肥厚 (ひこう) がみられるとされる.ほかの細菌性腸炎と比べ,発症年齢が高い,血便・下血が高頻度であり,発症から来院までの時間が短いことがK. oxytoca腸炎を鑑別する一助となる.治療は原因となった抗菌薬を中止するのみで,数日~1週間以内に病状は改善し,K. oxytocaに対する抗菌薬の投与は必要ない.
〔浮村 聡〕